SDGsの目標12を達成する3つのポイントと5つの企業事例
SDGs(Sustainable Development Goals)は、日本語で「持続可能な開発目標」と訳され、“2030年までに持続可能でよりよい世界を目指そう”という国際的な共通目標です。
自然やエネルギー、経済や教育、そしてジェンダーなど様々な問題解決に対する17の目標と、さらに169のターゲット(より具体的な目標)から構成されており、日本でも取り組みが進んでおります。
世界各国におけるSDGsの達成度は様々で、国によって取り組みが進んでいる目標や遅れている目標がありますが、特に日本では、SDGsの12番目の項目である「つくる責任 つかう責任」への取り組みが深刻な課題のひとつとされています。
しかし、大手企業をはじめ、積極的に取り組みを実施する企業も増えてきており、実際に私たちがその取り組みを目にする機会も増えてきました。
本記事では、SDGs12に取り組む企業の実際の事例を含め、SDGs12の目標達成のためのポイントや重要性について詳しく解説しますので、これから実際に取り組んでいこうとする事業者の方はぜひご一読ください。
SDGsの目標12を達成するための3つのポイント
まず、冒頭でも述べたようにSDGsには17の目標がありますが、その中でもSDGsの目標12は主に環境やエネルギーに主眼を置いた目標になります。
その目標を達成するためにやるべきことは細かく示されていますが、総括すると下記の3つの行動が目標達成のための重要なポイントになると筆者は考えます。
ポイント① ごみの量を大幅に減らす
ポイント② 資源の無駄づかいをなくす
ポイント③ これらの適切な管理
企業であれば自社の製品やサービス、あるいはや生産・管理の方法、そして消費者であれば日々のライフスタイルや行動意識を見直して、生産する側も消費する側も一丸となって上記3つのポイントにつなげていくことが求められています。
日本においてSDGs12、つまり環境や資源・エネルギーへの配慮については、世界的な水準からみると未だ課題が残っていますが、主に大手企業が牽引役となって、昨今では多くの企業が環境に配慮した取り組みを実施しております。
企業における5つの取り組み事例
ここでは、実際の企業の取り組み事例を紹介します。
事例① エスビー食品(食品)
スパイスやハーブを主力として扱うS&B(エスビー)食品は、輸入者、販売業者として国際フェアトレード認証を取得しており、一部の商品には認証を付けて展開しています。
フェアトレードは、開発途上国の生産者や労働者の生活改善や、経済格差をなくすための貿易の仕組みであり、適正な価格による取引が保証されていることや、労働者の労働環境が保証されていることを条件として認証されます。
また、農林水産省の登録認証機関であるエコサートの有機JAS認証も取得しており、これは、化学・合成品の未使用や気候・環境の保全、土壌の保全などの基準に則って生産されていることを示します。
◆フェアトレードや有機JASの認証を受けた商品
エスビー食品は、このようなSDGs12への取り組みだけでなく、健康や福祉、ジェンダーといったSDGsの目標達成についても積極的に取り組んでいます。
参考:エスビー食品とSDGs
事例② 日清食品(食品)
日清食品では、「カップヌードル」ブランドで使用されている容器に、プラスチック使用量と焼却時のCO2排出量を削減した「バイオマスECOカップ」を採用しています。
同社では2008年にも、石油などの資源消費の削減のため、再生可能な資源である紙を使用した「ECOカップ」に変更していますが、バイオマスECOカップはさらに進化した容器になります。
これにより、従来のECOカップに比べて、1カップあたりのプラスチック使用量をほぼ半減し、焼却時に排出されるCO2量も約16%の削減を実現しています。
◆カップヌードルのバイオマスECOカップ表記
参考:「カップヌードル」は「バイオマスECOカップ」で業界初のバイオマス度80%以上を実現 ~2019年から順次切り替え、2021年全量切り替え完了~
事例③ ユニクロ(アパレル)
ユニクロでは「服のチカラを、社会のチカラに。」をスローガンに掲げ、環境や社会に配慮した商品開発や貧困国への衣料支援などの取り組みを積極的に行っています。
先に述べた「3R」への具体的な取り組みとして、自社商品をリサイクル・リユースする「RE.UNIQLO」を実施しており、購入して着なくなった服を回収して新しい商品の原料資材として再利用したり、他国への衣料支援として活用しています。
そのため、ユニクロ各店舗では下記のように回収ボックスが備え付けられており、消費者は購入して着なくなった服(ユニクロ、GUに限る)を、何らかの手続きを踏むこともなく気軽に投入することができます。
◆店舗に備えられた回収ボックス
事例④ ヤマダデンキ(家電)
家電業界も環境に配慮した取り組みが進んでいる業界です。ヤマダデンキに陳列された商品を見ると、環境配慮に関連した様々なPOPが提示されています。
◆ヤマダデンキの商品まわりのPOP
冷蔵庫のPOPでは、省エネ性能の評価や基準達成率、また消費電力量がわかるようになっています。また、家電製品の買取も積極的に行っており、買い替えを促しながらリユース・リサイクルを通じた循環型社会の形成に貢献しています。
また、長期保証を提供することで「モノを長く使う」といったSDGs12の目標達成にもつなげています。
事例⑤ proteger(ITサービス)
弊社、株式会社KIVAではEC事業者や店舗事業者向けの延長保証サービス「proteger」を展開しており、事業者が自社のECサイトや店舗で販売する製品に対して、簡単に延長保証サービスを組み込むことができます。
延長保証サービスは、購入の際の安心を提供するだけのものではなく、壊れた製品をすぐ廃棄せずに、修理しながら長く使っていこうというサステナブルな観点で、SDGsの目標達成にも大きく寄与するサービスです。
家電や家具などの高額製品を中心に「proteger」では延長保証サービスの対象を広げており、「良いものを長く使う」といった消費行動の広がりが期待されます。
◆延長保証サービス「proteger」
ここで紹介した5つの事例は、企業の取り組みのごく一部であり、他にも多くの企業が各々の方法によって取り組みを進めています。
では、なぜ今このように企業が取り組みを進めているのか、理解をより深めるために、SDGs12について詳しく解説してまいります。
SDGsの目標12は持続可能な消費と生産のパターンを確保すること
まず、SDGsの17の大きな目標は下記の通りです。
◆SDGsの17の目標
この中の12番目の目標であるSDGs12「つくる責任 使う責任」は、国連において「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」こととされています。
「つくる責任 つかう責任」が目指すもの
「持続可能な消費と生産のパターンの確保」とは、人々の生活の質を改善するために資源やエネルギーを大切にしようという取り組みのことを指します。
世界の経済成長とともに我々の生活は非常に豊かなものになりましたが、その生活を支えているものは地球資源に他なりません。しかし、資源は有限であり、今や増え続ける人口を支える資源が限界に近づいていることが懸念されています。
そのため、これまで技術の発展と引き換えに無尽蔵に消費してきた資源を守らなければいけないという考えにシフトすることが求められているのです。
SDGs12「つくる責任 つかう責任」は、我々の生活をこれからも維持し、さらに改善するために、「つくる人」である企業や生産者と「つかう人」である消費者が、無駄をなくし、より少ない資源で生活の質を向上させ、より良い未来を目指すための指標なのです。
SDGs12が定める8つのターゲットと3つの対策
先に述べた通り、SDGsには17の目標があり、そしてさらに詳細な目標として、それぞれにターゲットが設定されています。
SDGs12には、下記の通り8つのターゲットと、加えてそれを実現するための3つの対策方法が示されています。
◆SDGs12の8つのターゲット
◆SDGs12の3つの対策方法
表を見ると、SDGs12の目標を実現するためにやるべきことが、より明確に見えてきます。
では次に、SDGs12が重要視される背景について、より詳しく解説します。
SDGs12が重要視される3つの背景
世界でSDGs12が重要とされている理由はいくつかありますが、特に大きな問題として以下の3つの背景があります。
背景① 膨大な食品ロス
FAO(国連食糧農業機関)によると、現在、世界全体で人の食用として生産されている食料のおおよそ3分の1、量にして年間で約13億トンが捨てられているとされています。
このような食品ロスは、生産の段階で使われた資源が無駄になっていることだけではなく、廃棄物として主に焼却処理される際の温室効果ガスの排出といった問題も含んでいます。
食品ロスが増え続けることによって、資源の枯渇による自然環境の悪化、そして将来的な食糧不足にもつながっていきます。
参考:世界の食料ロスと食料廃棄(Food and Agriculture Organization of the United Nations)
背景② 資源の枯渇
これまでのような大量生産と大量消費を続けてきた結果として、我々の生活を支える資源の枯渇が深刻化しています。
特に化石燃料などのエネルギー資源の枯渇に関しては、我々も実際に耳にすることが増えてきましたが、石油はあと50年、石炭は132年、天然ガスは49年でなくなってしまうと考えられています。
この年数はいずれも数年前の算出値ですので、今現在も増え続けている人口を考慮すれば、さらに枯渇化は加速し、より早い段階で資源を使い切ってしまう可能性も考えられます。
背景③ 水質汚染の深刻化
地球表面の70%が水で覆われていることから、地球は水資源が豊富なイメージがありますが、実は主に飲用として利用できる「淡水」は、地球の全水量のわずか3%にも満たない量です。
しかも、2.5%は南極や北極の氷河に占められているため、我々人間が享受できる水は、わずか0.5%しかない状態なのです。
そのような状況の中で、廃棄物などから排出される有害な化学物質によって水質汚染が進んでいます。そのスピードはすさまじく、湖や沼、河川など自然の力で再生、浄化できる以上の速さで汚染が進んでいる現状です。
このような深刻な問題が背景にありますが、どの問題も原因をたどってみると、行き過ぎた生産と消費が引き起こした結果であることがわかります。このまま何も手を打たなければ、遠からず我々の生活が維持できなくなる時が訪れることは明白でしょう。
こういったことから、今SDGsの目標12が非常に重要視されているのです。では、そんな中で日本の現状はどうでしょうか。
日本の現状について
冒頭でも述べましたが、SDGs12は日本にとって特に課題とされている目標のひとつです。その理由は、日本国内で排出される廃棄物の量にあります。
日本の食品ロスは年間523万トン
環境省の資料によると、令和3年の日本国内における食品ロスの発生量は約523万トンで、内訳として家庭系のロスが約244万トン、事業系のロスが約279万トンと推計されています。
下記は、国内の食品ロス量の推移を示したグラフです。
◆日本における食品ロス量の推移
グラフを見ると、緩やかではありますが食品ロスの総量は減少傾向にあります。しかし、最新の令和3年の食品ロス量は、前年と比べると家庭系食品ロスは3万トン減少しているものの、事業系食品ロスは4万トンの増加、総量にして1万トンの増加となっていることがわかります。
事業系つまり企業の食品ロスが増加している要因には、下記のようなことが考えられます。
・賞味期限が近い食品の廃棄
・過剰在庫による売れ残り
・飲食店での食べ残し
家庭においては比較的食品ロスの取り組みが進んでいる一方で、事業系の食品ロスは今後の課題となっています。
プラスチック廃棄量は年間824万トン
また、日本における問題は食品以外の廃棄物にもあり、特にプラスチックごみが環境に与える影響が問題視されております。
下記記事によると、2021年の廃プラスチック総排出量は824万トンとなっています。このうちの87%はリサイクルされており、下記のグラフの通り総排出量も減少傾向にあるなど、全体として改善に向かってはいますが、そもそもの総排出量が多い点は依然問題とされています。
◆廃プラスチックの総排出量・有効利用/未利用量・有効利用率の推移
日本のプラスチックごみの問題は、多くのプラスチックごみが海に流れ込むことで、海洋環境を悪化させている点にあります。
プラスチックは、自然界で分解されるまで百年単位の長い時間がかかるため、これが海に流れ込むことで海の生態系にまで影響が及んでしまうのです。
家電製品などの電子機器の廃棄物も多い
また家電製品や携帯電話などの電子機器の廃棄物が多い点も問題となっています。
日本では、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などをリサイクルすることを定めた「家電リサイクル法」や、これを携帯電話、パソコン、電子レンジ、カメラといった製品にまで広げた「小型家電リサイクル法」により、以前から電子機器廃棄物を減らす取り組みが行われてきました。
しかし、これらの廃棄物を他国に輸出して処分するケースも多く、輸出先の処分場の環境の劣悪さに起因した有害物質による健康被害なども増えているのが実情なのです。
ここまで、SDGs12で指摘されている、日本を含む世界の問題点について解説してまいりましたが、これらの問題を解決するためにすべきことを次に解説します。
SDGs12の目標を達成するために求められる10の取り組み
SDGs12に掲げられた目標を達成するためには、生産者・消費者ともに意識的な行動が求められます。
生産者に求められる5つの取り組み
企業などの生産者には、主に下記の5つの取り組みが求められます。
① 資源利用の効率化を最大化し、少ない資源で高品質なものを生み出す生産方法を確立する。
② 生産過程での廃棄物の削減や管理を徹底し、生産ラインの最適化を図る。
③ 化学物質の放出量を最小限に抑え、環境に配慮した製品開発に取り組む。
④ 廃棄物の再利用とリサイクルを促進するために、廃棄物の分別の徹底やリサイクルプログラムを導入する。
⑤ 消費者に対して、製品のリサイクルやリユースの呼びかけ、あるいは製品を長く使ってもらうための工夫を行う。
このようなことが企業に対して求められます。実現には少なくないコストがかかる部分もありますが、できるところから取り組んでいくことが大事です。
例えば、弊社で提供している延長保証サービスは、消費者に製品をより長く使ってもらうための工夫のひとつと言えるでしょう。
消費者に求められる5つの取り組み
そして消費者に対しては、主に下記の5つの取り組みが求められます。
① 省エネ家電などのエネルギー効率の良い製品や、リサイクル素材を利用した製品など環境に配慮したモノを積極的に選んでいく。
② 資源の無駄遣いを最小限にするために、節電や節水、省エネを意識した生活スタイルを実践する。
③ ごみの削減を目指して、不要なものを減らし使用済みの製品や資源をリサイクルする。購入時に包装の少ない商品を選んだり、エコバッグを活用するなどの意識的な行動を心がける。
④ 地元の商品を購入する、公共交通機関を利用する、不要なものを寄付するなど、地球環境と社会の健康を考慮した行動を心がける。
⑤ SDGs12が提示する「持続可能な消費と生産」に関する情報を積極的に共有し、個人ができる範囲で情報の発信や啓発活動に取り組み、他の人々と共に意識を高めていく。
以上のことが求められます。これもできるところから少しずつ始めていくべきです。
特に消費者は「3R」を意識して生活することが大事です。
3Rとは
・Reuse(リユース)
・Recycle(リサイクル)
・Reduce(リデュース)
のことで、モノをすぐに捨てずに繰り返し使用すること(リユース)、使用後の製品を資源として再利用すること(リサイクル)、そしてモノを大切に使い、ごみの排出量を抑えること(リデュース)です。
このように、日々の生活の中で無駄をなくし、モノを大切に長く使っていこうといった意識が求められています。
現状を見直して可能なところから改善していこう
SDGsの目標12は「つかう責任 つかう責任」の言葉通り、生産する側も消費する側も、環境維持と改善に責任を持って主体的に取り組むことが求められます。
しかし、企業にとっては、すぐさま抜本的な改革を実施するのは簡単なことではありません。そのため、今置かれている環境や、提供しているサービスや商品を見直して、可能なところから改善していくことが重要です。
例えば家電製品などであれば、事例でも紹介したように、ユーザーにより長く使ってもらうために保証サービスを厚くするといったことも、費用を抑えながら導入できる方法のひとつでしょう。
弊社が提供している延長保証サービス「proteger」は、単に事業者の利益につながるだけでなく、製品を長く使ってもらうことで結果的に環境負荷の低減にも寄与する、昨今のニーズにマッチしたサービスと言えます。この機会にぜひ検討してみてはいかがでしょうか。