延長保証サービスを徹底解説!サービスに加入すべき理由とは?
延長保証サービスとは、商品購入時にあらかじめ保証料(加入料)を支払うことで、メーカー保証期間の終了後、一定期間保証を延長するサービスです。
主に家電製品や自動車など、高額な製品に対して付帯されることが一般的でしたが、昨今では住宅設備機器や自転車、家具、楽器など、幅広い製品に対して延長保証サービスが提供されています。
コロナ禍を経て消費者マインドが変化し、「良いものを長く使いたい」というニーズが高まっている中で、延長保証サービスは今後より需要が増えていくと考えられます。
そこで本記事では、延長保証について、基本的なサービスの内容やメリット、家電量販店のサービス比較など様々な角度から詳しく解説いたします。
延長保証サービスとはメーカー保証期間を延長して保証を受けられるサービスのこと
まずは、下記の図をご覧ください。延長保証サービスに加入した場合と非加入の場合を比較した図になります。
◆延長保証サービス加入/未加入の比較
※メーカー保証1年、延長保証5年の場合
このように、延長保証サービスとは、保証料を支払うことでメーカー保証期間(通常1年)を3年、5年、長いものでは10年など、メーカーあるいは販売店が設定した期間延長して保証を受けられるサービスです。
期間中に発生した故障(主に自然故障)や不具合について、無償あるいは一部有償にて修理を受けることができるため、購入した商品を長期にわたって安心して利用し続けることができます。
延長保証サービスは、日本では1990年代中ごろから家電量販店や自動車ディーラーを中心にサービスが普及し始めました。
現在では、PC関連機器や住宅設備機器、オーディオ機器、自転車、楽器、家具、介護福祉用品など、様々な製品において延長保証サービスが提供されています。
延長保証サービスは高額商品において需要の高いサービス
家電などの工業製品は、故障しても自身で修理をすることは難しいため、通常は業者に修理を依頼しますが、総じて修理費用は高額になりやすく、業者の都合が合わないため何日も待たされるといったことも少なくありません。
また筆者の経験上、メーカー保証期間は通常1年ですが、新品購入した商品が1年以内に自然故障することはほとんどありません。大抵の場合は、2年、3年と使って初めて調子が悪くなることがほとんどでした。
少し前のデータですが、家電製品協会の「家電製品使用年数調査報告書」を見ると、冷蔵庫や洗濯機、テレビといった大型家電は、平均的に見て5年から10年にかけて買い替えが頻繁に行われているようです。
参考:「内閣府「消費動向調査」データによる家電製品使用年数調査報告書(2017年度版)」(一般財団法人 家電製品協会)
つまり、メーカー保証だけでは、一般的にトラブルが発生しやすくなる時期には保証が切れてしまい、故障で思わぬ出費を必要とされるといった可能性が少なくないのです。
こういった点から、家電製品など修理に専門性を必要とするような高額商品においては、特に延長保証は需要の高いサービスと言えます。
延長保証と保険の違い
延長保証は(掛け捨ての)保険といったイメージを持たれることがあります。実際に、延長保証サービス提供会社は保険会社と提携してサービスを提供しますが、サービス自体は、保険とは一線を画すものです。
下記の延長保証と保険の比較図をご覧ください。
◆延長保証と保険の違い
上図の通り、そもそも延長保証は、あらかじめ保証料を支払っておくことで、メーカーや販売店が、無償あるいは有償にて消費者に保証を提供するもので、製品に対して修理・交換といったサービスを提供するのが延長保証サービスであり、修理費用を消費者の代わりに支払ったり、消費者自身が手配して行なった修理費用を消費者に支払うといったことは行いません。
つまり、一般的に部品や製品の交換により、故障した製品を正常に使用できる状態に戻すことが「保証」であり、金銭による補償を行う「保険」とはまったく異なるものです。
では、その延長保証サービスでは、実際にどのようなサービスが提供されるのかを次に解説します。
延長保証の5つの種類
延長保証サービスは、一般的に下記に挙げる5つの種類があります。
① 自然故障に対する保証
製品を取扱説明書どおりに使用しているにも拘らず発生した自然故障や不具合に対する保証を提供するサービスです。通常、故障箇所の修理や不良部品の交換を行います。
② 物損故障に対する保証
一般的な損傷や事故など外的要因による故障に対する保証を提供するサービスです。例えば、スマートフォンなどの携帯端末や電子機器において、画面割れや水濡れ、落下による損傷などに対する保証です。
③ 技術サービスやサポート
製品に対する技術的なサポートやトラブルシューティングを行うサービスです。製品やアプリケーションの設定のサポートや、ソフトウェア・ハードウェアの問題を解決します。
④ 交換保証
故障した製品や不良品について、修理ではなく新しい製品と交換するサービスです。特に高額な商品につけられることが多い保証で、故障だけでなく盗難・紛失も対象となることもあります。
⑤ 付加サービス
一部の延長保証サービスでは、製品のアップグレードやソフトウェアの更新、あるいはデータのバックアップなどの付加的なオプションが含まれる場合があります。
大手家電量販店の延長保証サービス
それではここで、実際の延長保証の内容がどういったものか、延長保証サービスを提供している業界において代表的な家電業界を例にして解説します。
下記の表をご覧ください。大手家電量販店が提供する延長保証サービスについて、各社のサービス内容を比較したものです。
◆大手家電量販店各社の延長保証サービス比較表
※その他制限の内容については一部抜粋となります。より詳しい保証規定について、また対象商品などは各社の公式サイトよりご確認ください。
上記の表を見ると、延長保証サービスといっても各社それぞれ保証の内容に違いがあることがわかります。
ビックカメラやヨドバシカメラは、加入料を現金の代わりにポイントにしています。また、エディオンやジョーシンは、カード会員であれば延長保証の加入が無料になります。
このように、自社のサービスに絡めることで延長保証に加入しやすい仕組みを作っているといった特徴が見られます。
総合的に見ると、保証期間が3年・5年と短いものの、修理限度額と回数に制限のないケーズデンキが最も保証内容が優れている印象です。
また、10年保証のあるジョーシンやエディオンも、長期間使用するほど摩耗故障が増える家電製品の性質から考えると、ユーザーとしてはありがたい保証内容です。
業界上位(※)の売上を誇るヤマダデンキやヨドバシカメラに対して、ケーズデンキやジョーシン、エディオンは、このような延長保証サービスなどに業界優位性を見出しているものと筆者は考えます。
家電業界では取り扱う製品が同じため商品品質に差が出ません。そこで安易に価格を下げてしまっても、価格競争に陥ってしまうだけです。そのため、各社とも延長保証などのアフターサービスにおいて差別化をはかっているのです。
では次に、延長保証サービスのメリットについて解説してまいります。
延長保証サービスのメリット
延長保証サービスには、ユーザー(購入者)が安心して長く製品を利用するためのサービスですが、ユーザーだけでなく提供する企業(メーカーや販売店)にもメリットがあります。ここでは、両者のメリットについて解説します。
ユーザー側のメリット
・万一故障しても無料で修理ができる
購入した製品が故障してしまっても、保証期間中は無料で修理を行ってくれるので、気兼ねなく安心して製品を使うことができます。
特に家電製品やパソコンなどの電子機器は、故障してしまうと自分で修理するのは難しいため、この点は最も大きなメリットと言えます。
また、家電製品や電子機器、あるいは住宅設備機器などは、修理代金も高額になることが多いですから、修理による突発的な高額出費を避けられるといった点もメリットのひとつです。
・製品を長く使える
せっかく購入した商品ですから、長く利用していきたいものです。特に相性の良い製品、愛着のある製品であればなおさらです。故障してしまったら修理してでも使いたいお気に入りの製品を長く使い続けられるのも、延長保証サービスのメリットです。
・カスタマーサポートを利用できる
延長保証サービスには、専門的なカスタマーサポートを提供されることがあります。故障や不具合にかかわらず、ちょっとしたことでも気軽に質問もしやすいのは、ユーザーにとっては大きな安心感があります。
企業側のメリット
企業側のメリットは、大きく2つの観点でのメリットがあります。
① マーケティングの観点でのメリット
・顧客満足度の向上
延長保証サービスにより、ユーザーに「長く安心して使える」「故障しても無料で直してもらえる」といったメリットを提供することで、顧客満足度の維持向上につながります。
顧客満足度の向上は、他社との明確な差別化となり、またユーザーの思い入れも深まることで顧客ロイヤルティの向上にも結びついていきます。
・追加販売や買い替えが期待できる
マーケティングにおいて、新規顧客の獲得には既存顧客の維持コストの5倍のコストがかかるという法則があり、これは「1:5の法則」と呼ばれます。
この法則は、新規顧客は獲得コストが高いにもかかわらず利益率が低い一方で、既存顧客は維持コストが安く販促効果も高いため、既存顧客の維持は新規顧客の獲得以上に重要であるといった考え方につながります。
このことから考えると、延長保証サービスは既存顧客の維持につながり、サービスを活用して定期的に販売促進のアプローチを行うことで、追加販売ができたり、買い替え時に再び自社で購入してもらえる確率が高くなるのです。
・LTVの向上
上に述べたこれらのことを通してユーザーとの関係値は高まっていきます。関係値が高まれば来店頻度も増え、保証対象商品の買い替え時には、買い替え商品の他にも関連商品やサービスの購入も期待できるなど、顧客単価が上がり、最終的なLTV(顧客生涯価値)の向上につながっていきます。
② 品質向上の観点でのメリット
製品の品質管理方法のひとつに「トレースバック」と呼ばれるものがありますが、これは例えば、出荷した製品に問題が生じた場合に、製造工程を遡って部品や製品を追跡することで、影響のある製品の範囲(ロットなど)を特定することです。
延長保証サービスの故障修理の依頼によりトレースバックを行うことで、故障原因や状況の特定ができます。このようなデータを蓄積・分析することで、製品やサービスの改良・改善につなげることができます。
また、トレースバックは時系列を遡って追跡しますが、時間経過に沿って部品や製品を追跡する管理方法があります。これは「トレースフォワード」と呼ばれます。
例えば、ある部品に不良が判明した際に、その部品が使われている製品と製造時期を特定し、速やかに製品を回収することができます。
一般的に延長保証サービスでは、サービス加入時に所有者登録を行うため、このトレースフォワードが非常に容易になります。
このトレースバックおよびトレースフォワードについて、イメージしやすいよう図にしましたので、下記をご覧ください。
◆トレースバックとトレースフォワード
以上のことから、延長保証サービスは製品やサービスの品質向上に大きく寄与することになるのです。
また、トレースバックやトレースフォワードがしっかりと行われることで、万一製品に問題があった場合に、製品回収にかかるコストやブランドイメージに対する傷も最小限に抑えることができるのです。
保証業界で進むデジタル化
他産業に比べてデジタル化が遅れていると言われてきた保証業界ですが、ECサイトやアプリといったプラットフォームを通じた延長保証サービスの提供が普及し始めています。
パナソニックが提供する「IoT延長保証」
大手家電メーカーのパナソニックでは、同社が展開するIoT対応商品において、1年のメーカー保証に加えて、さらに2年の延長保証を無料で適用する「IoT延長保証」サービスを提供しています。
この延長保証サービスは、購入したIoT対応商品をインターネットにつなぐことで、計3年間の保証が提供されるサービスで、対象製品と専用アプリを連携させて商品登録を行い、アプリからサービスの申込みを行います。
また、インターネット接続により、製品についてのお困りごとや使い方などのお役立ち情報や便利機能の紹介など、購入後もこのようなサポートにより、安心して家電を使用できます。
さらには、IoTデータを通じて、遠隔で故障検知・状況把握などを正確に診断することができるサービスも、2022年3月からエアコンで開始しました。
EC事業者向けの延長保証サービスの登場
延長保証と聞くと、家電を買う際に店舗で加入するイメージが強いと思いますが、普段自宅での買い物に利用しているECサイトでも、延長保証に加入できるサービスが増えてきています。
弊社の延長保証サービス「proteger(プロテジャー)」は、ECサイトに延長保証を提供するサービスです。
本サービスを導入したECサイトでは、ユーザーは商品を購入する際に保証プランを選択するだけで簡単に延長保証に加入ができ、製品交換や修理を24時間365日、チャットでいつでも申請できるようになります。
先に述べたように、延長保証サービスは、これまで大手家電量販店や自動車ディーラーが扱う高額商品に付帯させることが一般的だったため、小口の販売業者にとっては導入のハードルが高いサービスでした。
しかし、このように小規模のEC事業者が安価で簡単に延長保証を導入できるサービスが登場してきたことで、ユーザーとしても様々な製品やサービスを購入する機会が増えることになります。
まとめ
延長保証サービスは、家電製品などの高額な商品を安心して長く使っていけるサービスです。
コロナ禍以降はサスティナブルな取り組みを行う企業が増え、消費者意識においても「モノを大切にする」という傾向が強まりました。延長保証サービスは、そのような時代にマッチし、今後ニーズが高まってくるサービスと言えます。
また、例えば家電製品であればどこで購入しても品質に差がありませんが、延長保証によりアフターサービスが充実することで、他社との大きな差別化となり、顧客満足度の向上につながります。
このように、延長保証サービスはユーザーにとっても提供企業にとってもメリットの大きいサービスなのです。